現役通訳のわたしのところには、いろんな方から英語の勉強法について、問い合わせがあります。
どうしたら聞き取れるようになるか。
どうしたら理解できるようになるか。
どうしたら口から出てくるようになるか。
否定的な意見の多い日本の英語教育ですが、わたしは文法が理解できていればいるほど、正しい英語を習得することができると思っているので、日本の文法英語教育、賛成派です。
通訳の世界でも、文法をどれだけ理解しているか、というので、通訳の内容の質も違ってきます。
なので、英語を勉強してみたいのだけど・・・と相談がある場合は、わたしはまず、どのレベルを目指しているのか、ということを大切にお聞きしています。
例えば、社内にいる外国人と世間話を中心とし、少しだけ仕事の話ができればいい、というのであれば、英会話教室に通い、学生のときに勉強してきた文法の上乗せで、今度はアウトプットの方法を習えばいい。
会議等でも英語を使い、自分でプレゼンをし、相手のプレゼンを聞き、意見を交換し、仕事を進めていく、というのであれば、文法を更に磨き、会話のアウトプットも大切になってくる。
英語をメインとして使う仕事をしたい、というのであれば、ネイティブの英語の使い方のコツ、発音の癖、リズム、音をネイティブと同じにすること、それには正しい文法が必要であり、その上でネイティブと同じように話せるようになってほしい。
今日はお仕事で重要な案件を含めて英語を必要とし、出張等の場面で社交的での英語も必要とし、それをできるだけ早く習得したい、というビジネスマンの相談ケースをお話ししたいと思います。
いろんな英語の学習法があり、自分に合った方法を探すことが大切だけど、時間の限られた忙しい大人には、中でも効果的なものを選べば、短期での習得も夢ではないとわたしは思っています。
今日はこのビジネスマンに受けた相談内容から、この方にぴったりだと思ったスクリーンプレイについてお話ししたいと思います。
御存知の通り、スクリーンプレイというのは、映画を見て英語を習得していく方法です。
映画が好きだから、というだけで、安易に飛びつくのはよくないし、逆に映画にはあまり興味がないから、と本当はこの勉強法があっているのに、敬遠していたら勿体ない。
スクリーンプレイ学習法があっている方は、こんな方です。
☆文法は比較的しっかりと理解している。
☆英語も割と使い慣れていて、上級者だと言い張れなくとも、日常会話等では困らない。
☆多少ぎこちなくとも、メールや簡単な書類は自分で書ける。
☆今後のステップとして、ネイティブ独特の言い回し、発音ブラッシュアップが課題。
日本人は英文を見て、読んで、目で見たアルファベットを読む学習を学校でしてきています。
なので、文を読み、理解するというのは比較的できる方が多いです。
ところが、ネイティブの英語というのは、そういう日本人が覚えてきた文法の法則を無視したような語順があったり、見た英文とその意味が違うというのは多々あります。
スクリーンプレイはストーリーのある映画から、生きた英語を聞いて、読んで、吸収していくため、フレーズとして理解していくことができます。
目次
スクリーンプレイで英語を勉強するメリット
言いたいことを言おうとすると、日本語で考え、それを英語にしようとしてしまうため、同じような文が英語で浮かばず、がっかりしてしまう、というのはよくある話です。
わたしたちが学校で習ってきた英語と、実際ネイティブが使っている英語というのは違うところもたくさんあります。
こんなに簡単に言えるの?というくらい、さっと出す言い回しがたくさんあるんです。
スクリーンプレイは、そういう生きた会話を、映画を観ながら学んでいくことができます。
ですから、ある程度英語を理解し、ベースがある方にぴったりの学習法だと言えます。
スクリーンプレイの効果的なやり方
まずはただ観る!ということです。
最初からすべて理解しようとせず、わかる範囲で大丈夫です。
軽く1~2回観てください。
それからスクリプトを読みましょう。
観てわからなかった箇所をスクリプトで読み、セリフを文字で見て理解してください。
そしてこの作業を繰り返していただきます。
その作業から、自分の聞き取れていない部分、理解できない部分を洗い出すことができます。
鉄則は、わからないところはスクリプトを見て、意味を理解してまた見る、ということです。
どのような効果が出るのか
この方法で、一般的な英語学習ではカバーできない、ネイティブ独特の言い回し、単語だけでぱっと口に出すようなフレーズ、またリスニングとして、発音を繋げる癖、そういうものが見えてきます。
例えば、疲れた?という言いたいときに、ぱっと浮かぶのは、are you tired?かと思います。
勿論これでなんの間違いもありません。
でも、ネイティブの世界では、ストレートに、tired?だけで伝えることもあるのです。
そういう英会話の感覚を、映画のセリフから拾っていくことができるのです。
英語字幕の映画で英語力が上がる理由
知らない言い回しを身につけることができる、もうこれが一番です。
日本語でこれを言おうと思ったら、とてもややこしい英語になってしまう、という悩みが、こんな簡単に言って伝わるの?、と目からウロコの経験をたくさんしていただけるはずです。
知らない表現、使い方が出てきたら、メモをとる習慣をつけましょう。
そうすることにより、語彙を増やすことにつながります。
自分にあったスクリーンプレイリストの見つけ方
御自分の興味のある映画、というおススメをしたいのですが、アクション映画、歴史映画等になると、英語自体難しくなったりするので、あえて、日常会話の多く使われる作品がベストです。
また、英語というのは、コミュニケーションツールですので、気持ちが相手に伝わらないことにはなんの意味もありませんよね。
ですから、自分の気持ちを表現しているような、会話の多い作品を選ぶことがポイントになってきます。
スクリーンプレイで更に効果を出すために
セリフを役になりきって、シャドーイングしてみましょう。
フレーズで知らない表現を書き出している最中に、一緒にそのセリフを言ってみる、それで結構です。
音を拾い、同じように出す、という発音の練習にもなります。
目で見て読む英語の中には、耳で聞くと全く違うものもたくさんありますよね。
そういうものをすべて吸い上げて、子どものように、耳から聞いて、それを口真似する、これをすることで、ネイティブの音、リズムが出せるようになり、ものすごくいい相乗効果となります。
生きた英語は財産!
いかがでしたか?
わたしたち日本人は、子どものころ、学校で文法をしっかり勉強しています。
読む、という練習も比較的しているはずです。
でもそれをネイティブのような発音でというと、どうしてもそれができない。
また、日本語という言語の複雑性により、日本語から英語に直そうとすると、うまく翻訳できない言い回しがたくさんあります。
わたしたち通訳は、もちろんそういうことを熟知し、意訳になりすぎないように、日本語で聞く文に対し、全く同じ温度で、同じ響きで、同じ感覚の英語に変換する必要があります。
それは、デスクの上でやってきた文法学習だけではどうしても足りません。
スクリーンプレイのような生の英語、生の言い回し、またそういうものが、適格な表現を教えてくれ、自分たちでそれを吸収し、使えるようになります。
そうでないと、AIのような、温度のない文として相手に流れてしまい、オリジナル言語で意図していたものと、開きがでてしまうのです。
そういったことからも、わたしは英語中級者以上の方には、スクリーンプレイをおススメし、生きた英語をネイティブの発音で吸収し、どんどん使える言い回しを口真似し、英語の引き出しの中身を充実していただきたいと思います。